「青磁」
古来 中国では青銅器・玉器を美の理想とし、豊富な材料の陶磁土でそれらに迫ろうとして生まれたのが青磁である。
紀元前の原初的灰釉の青磁から、各時代 生産地(窯)ごとに進化し、より美しく バラエティー豊かな青磁が焼かれ、長くあまたの歴史を刻んできた。

青磁は釉薬に含まれる少量の鉄分が還元焔焼成されて緑色を呈するのが基調。素地上の鉄分も釉の色に影響を与える。当倶楽部で通常使用している青磁釉は長石二種を主成分に15種にわたる原料を調合している。釉に鉄分を多くしても青色は濃くならない。深い青にするには釉を濃く厚く掛ける。
南宋時代 竜泉窯の日本人の言う「砧青磁」に倣った鯱耳花生には、信楽並土に磁土成分の白化粧を施してある。半磁土で成形した輪花鉢とともに素地からの色の影響がなく、釉の青味が美しく出ている。

釉を何層にも厚く掛け 二重三重に貫入がはいる「氷裂青磁」は、土と釉の熱膨張率を大きく引き離すための原料選びが重要。当倶楽部では10種類の長石を試し、1種のみ成功した。

北宋から金・元時代の「鈞窯」で焼かれた青磁は、原料に藁灰を使用した乳濁 失透の澱青釉。釉下に銅と塩化コバルトを施し、紫紅色の斑文を表している。

「耀州窯」の主流をなしたのが地肌に「片切彫」で花文をつけたもの、先出と同じ竜泉窯で作られた釉下に鉄絵の飛文があるもの、朝鮮半島で焼かれた鉄分の多い土に白・黒化粧を象嵌した「象嵌青磁」、これらは生での加飾 素焼後の弁柄絵付等 釉下に手を加え、当倶楽部常備の青磁釉を掛け、プロパンガス窯還元焔焼成している。
この青磁釉を酸化焔焼成して いわゆる「米色青磁」に、又 窯出し後 貫入に墨汁を塗り込んで「貫入青磁」にと歴史伝世の青磁に倣って、いろいろに表現している。


福田百合